
メインウィンドウ © Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon
銀座の街を歩く人が、立ち並ぶショップウィンドウの端から端まで通り過ぎるのに、10秒はかからない。ほとんどの人は視線を滑らせるだけで先へ進むが、足を止めて覗き込む人もいる。アーティスト・津田道子が今秋、銀座メゾンエルメスのウィンドウに仕掛けたのは、その一瞬の覗き見の先に待っているものだ。
ガラスブロックの外壁を持つ銀座メゾンエルメスは、設計者レンゾ・ピアノが、ランタンのように街を照らす存在であってほしいという思いを込めて、2001年に建てられた特徴的な建物である。「ランタン エルメス」は、そのメゾンをより知ってもらおうという思いで始まったプロジェクトで、3年目の今年は、とくにウィンドウに焦点を当てている。

エルメスにとって、ブティックのウィンドウは重要なメディアのひとつである。パリのフォーブル・サントノーレ通りにある本店のウィンドウは、かつて「エルメス劇場」と呼ばれた。手袋担当だったアニー・ボーメルが芸術的な装飾を施し、道行く人々の目を釘付けにしたことが始まりだという。その伝統はいまも続き、世界中の店舗が年に約4回、衣装替えをするようにウィンドウを入れ替えている。

2026年の年間テーマは「冒険の呼び声」。津田はこの言葉をどう受け取り、街に向けたウィンドウにどう置き換えたのか。彼女が手がけるウィンドウディスプレイ「Looking Beyond - その向こう側へ」は9月10日から公開されている。
ここでは会期中に開かれた、アートプロデューサーの住吉智恵とのトークセッションの内容をもとに、エルメスがアーティストと重ねてきたウィンドウの試みと、津田の作品を紹介する。
