公開日:2026年10月6日

「アート・ジャカルタ 2026」レポート。75ギャラリーが集結、日本とゆかりのあるアーティストにも注目

会期は10月2日から4日まで。インドネシア・ジャカルタのJIExpo Kemayoranで開催。

東南アジアを代表するアートフェア「アート・ジャカルタ(Art Jakarta)2026」が、10月2日から4日まで、インドネシア・ジャカルタのJIExpo Kemayoranで開催された。今年はインドネシア国内から42、海外から33の計75ギャラリーが参加し、そのうち19ギャラリーが初出展。東南アジアを中心に、日本、韓国、台湾などアジア各地の現代アートが一堂に会した。

昨年に続き、韓国のギャラリーを紹介する「Korea Focus」が展開されたほか、インドネシア各地のアートコミュニティを紹介する新セクションも登場。企業とアーティストによる大型インスタレーションなど、多彩なプログラムが会場を彩った。

本レポートでは、日本とゆかりのあるアーティストの作品にも注目しながら、今年のフェアを振り返る。

韓国から14ギャラリーが参加。アジアのアートシーンをつなぐフェア

今年もインドネシアを中心に、東南アジア各国のギャラリーが参加。国際的な交流の場としての役割を強く感じさせる構成となった。なかでも注目したいのが、昨年新設された「Korea Focus」だ。韓国文化体育観光部および芸術経営支援センター(KAMS)の協力によって展開され、昨年の12ギャラリーから今年は14ギャラリーへと規模を拡大した。

韓国では国際的なアートフェアや展覧会を通じて現代アートへの注目が高まっているが、ギャラリーにとっては海外の新たなコレクターとの接点をつくることも重要だ。人口規模が大きく、アート市場のさらなる成長が期待されるインドネシアは、その進出先のひとつとなっている。

昨年の取材では、韓国のギャラリーOUTHOUSEのディレクターが、国内市場だけでなく海外での可能性を探りたいと語っていた。こうした動きは今年も続いており、アート・ジャカルタがアジア各地のギャラリーにとって重要な交流の場となっていることがうかがえる。

また、日本からも複数のギャラリーが参加。インドネシアを中心とする東南アジアのアーティストと、日本や韓国、台湾のアーティストの作品を同じ会場で見ることができる点も、このフェアの魅力だ。

日本とのつながりがある作家も参加。インドネシアのアーティスト、アンキ・プルバンドノとアディ・スンドロ

今回の会場では、日本での滞在制作や展覧会などを通じて、日本のアートシーンとつながりを持つインドネシア人アーティストの作品にも注目したい。

そのひとりが、ジョグジャカルタを拠点に活動するアンキ・プルバンドノ(Angki Purbandono)だ。アンキは、カメラの代わりにスキャナーを用いてイメージを制作する「スキャノグラフィー」という手法で知られるアーティスト。身近な物や自然物をスキャンし、独自の構図によって新たなイメージを生み出してきた。2009年には「第4回福岡アジア美術トリエンナーレ」に参加するなど、日本との交流も長い。今年のアート・ジャカルタでは、SAL Projectから大型インスタレーション《Berbunga-bunga: Tribute to Red Cross Movement in South Papua》(2026)を発表した。

作品は、スキャノグラフィーによるイメージとライトボックス、竹を組み合わせたもの。南パプアの先住民による土地や森林を守る運動に着想を得ており、土地の権利や環境問題を背景に持つ。鮮やかな花々のイメージとともに、インドネシアが抱える社会的な問題を提示する作品となっている。

もうひとりが、SEWU SATUのブースで紹介されていたアディ・スンドロ(Adi Sundoro)だ。1992年ジャカルタ生まれのアディは、版画を中心に、印刷という技法を拡張しながら制作を続けている。日常生活のなかにある些細な出来事や社会制度に着目し、印刷物や身近な素材を通じて、社会の仕組みを考察する作品を発表してきた。

2025年には国際芸術センター青森(ACAC)のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに参加。インドネシアで日常的に食べられる揚げ物「ゴレンガン」の包装紙に、個人情報を含む書類が再利用されていることに着目し、日本とインドネシアにおける情報管理やプライバシーに対する意識の違いを探究した。また、同年にはジャカルタの美術館、Museum MACANの子供向けアートスペースのプロジェクトにも参加するなど、活動の幅を広げている。

インドネシアのアーティストが日本での滞在制作を通して新たな視点を獲得し、その経験を作品へとつなげていく。こうした交流も、アジアの現代アートシーンを支える重要な要素のひとつだ。

企業とアーティストのコラボレーションを積極的に

アート・ジャカルタの特徴のひとつが、企業とアーティストによる積極的なコラボレーションだ。

フェアの主要パートナーには、スイスのプライベート銀行ジュリアス・ベア(Julius Baer)や、インドネシアの金融機関BCA、投資サービスを展開するBibitとStockbitなどが名を連ねる。企業は単にフェアを資金面で支援するだけでなく、アーティストと協働し、作品やインスタレーションを発表している。

金投資プラットフォームのTreasuryは、エッツァ・メイシャラ(Etza Meisyara)と協働し、《Gravity of the Unheld》を発表。金が持つ物質的な価値に加え、人々がそこに見出す意味を、複数の感覚に働きかけるインスタレーションを通じて表現した。

そのほか、MINIとファッションブランドPaul Smithの取り組みなど、金融からファッション、ライフスタイルまで、幅広い企業がアートフェアに参加している。昨年もBCAと若手アーティストMuklayのコラボレーションが注目を集めたが、今年も企業がアーティストの創造性を取り入れながら、来場者に新しい体験を提供する姿勢が印象的だった。企業が現代アートに関わることは、アーティストの制作を支えるだけでなく、普段はアートに触れる機会の少ない人々との接点を生み出すことにもつながっている。

アート・ジャカルタが特徴的なのは、インドネシアのアートシーンを基盤としながら、海外との交流や地域のコミュニティ、企業とのコラボレーションを積極的に取り入れている点だ。作品を売買する場であることはもちろん、異なる国や地域のアーティスト、ギャラリー、コレクターが出会い、新たな関係を築いていく。アジアの現代アートが多様な広がりを見せるいま、アート・ジャカルタは東南アジアのアートシーンをつなぐ重要なプラットフォームとして、その存在感を高めている。

諸岡なつき

「Tokyo Art Beat」 Head of Sales

諸岡なつき

「Tokyo Art Beat」 Head of Sales

2015年5月より「Tokyo Art Beat」で勤務。